【専門家が解説】遺言書作成の注意点|無効にならないためのポイントとは?

人生の最期に向けて、大切な財産や想いを確実に遺すために**「遺言書」**は非常に重要な役割を果たします。
しかし、適切な方法で作成しなければ、無効になったり、相続人同士のトラブルを引き起こしたりする可能性があります。

「自分で簡単に書けばいい?」
「どんな遺言が無効になるの?」
「遺言書があれば相続トラブルは防げる?」

今回は、遺言書を作成する際の注意点や、失敗しないためのポイントを詳しく解説します。


1. 遺言書の種類を知ろう|自筆証書と公正証書の違い

遺言書にはいくつかの種類がありますが、主に以下の2つが選ばれることが多いです。

① 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

特徴

  • 自分で全文を手書きする
  • 費用がかからず、好きなタイミングで作成できる
  • 2020年の改正により、財産目録はパソコンや通帳のコピーでもOK

注意点

  • 内容に不備があると無効になる
  • 相続人が見つけられない場合がある
  • 死後、家庭裁判所での「検認」が必要(例外あり)

② 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)

特徴

  • 公証役場で公証人が作成するため、法的に確実
  • 相続人が遺言書を探す必要がなく、紛失の心配がない
  • 家庭裁判所での「検認」が不要

注意点

  • 作成に証人2人が必要(利害関係のない人)
  • 費用がかかる(公証役場の手数料)
  • 東京の公証役場に自ら出向くか、島に公証人を呼ぶ必要がある。

2. 遺言書が無効になる原因とは?

せっかく遺言を残しても、法律に違反していると無効になってしまいます。
以下の点には十分注意しましょう。

① 形式不備による無効

  • 自筆証書遺言なのにパソコンで作成している
  • 署名・押印がない
  • 日付が不明確(例:「〇月吉日」では無効)

✅対策:「手書き・日付・署名・押印」を必ず確認する

② 遺言能力の欠如

遺言者が認知症や判断能力が低下しているときに作成した遺言は無効になる可能性があります。
特に認知症が進行している場合、相続人から無効を主張されることがあるため注意が必要です。

✅対策:公正証書遺言を作成し、公証人が遺言能力を確認する

③ 相続人の遺留分を侵害している

遺言書で全財産を特定の相続人に譲ることはできますが、他の相続人には「遺留分」という最低限の権利があります。
遺留分を無視した遺言書を作成すると、相続人同士の争いに発展する可能性があります。

✅対策:遺留分に配慮した内容にする or 「遺留分対策」を事前に講じる

3. 遺言書作成の注意点|トラブルを防ぐために

遺言書は「書けばいい」だけではなく、内容を慎重に考えることが重要です。
特に、相続トラブルを防ぐためには、次の点に気を付けましょう。

① 財産の分配は明確に!「曖昧な表現」は避ける

遺言書の文章が抽象的だと、解釈の違いで相続人同士が争う原因になります。

❌ 悪い例
「妻にできるだけ多くの財産を譲る」

✅ 良い例
「〇〇銀行の預金300万円を妻〇〇に相続させる」

具体的に**「誰に」「何を」**譲るのかを明記することが重要です。

② 付言事項を活用し、感情的な対立を防ぐ

「なぜこの分け方にしたのか?」を記載しておくと、相続人が納得しやすくなります。

📌 付言事項の例
「長男には家業を継いでもらうために不動産を譲る。次男には公平を考え、現金を分ける。」

法的拘束力はありませんが、相続人の理解を得る助けになります。

③ 生命保険や預貯金も確認!「遺言で分けられない財産」に注意

遺言書では、すべての財産を自由に分配できるわけではありません。
例えば、生命保険金は受取人が指定されていれば、その人が受け取るため、遺言書の内容とは関係ありません。

また、共有名義の不動産も分割しにくいため、事前に相続対策を考えておく必要があります。

4. 遺言書の保管方法も重要!確実に見つけてもらう工夫を

せっかく遺言書を書いても、発見されなかったり、紛失すると意味がありません。

① 遺言書保管制度を利用する(自筆証書遺言の場合)

2020年からスタートした**「法務局の遺言書保管制度」**を利用すると、家庭裁判所の「検認」が不要になり、遺言の紛失や改ざんの心配がなくなります。

✅メリット

  • 遺言書の保管場所を相続人が探す手間が不要
  • 紛失・改ざんのリスクを防げる

✅デメリット

  • 公正証書遺言と違い、遺言の内容が法的に問題ないかはチェックされない

まとめ|遺言書は正しく作成し、確実に遺すことが大切

遺言書は、自分の財産をどのように分けるかを明確にするための大切な書類です。
しかし、形式不備や曖昧な表現があると無効になったり、相続人のトラブルの原因となることもあります。

✅ 遺言書作成のポイント

  • 法的に有効な形式で作成する(手書き・署名・押印を忘れずに)
  • 財産の分配を明確に書く(誰に、何を)
  • 遺留分に配慮する(無効やトラブルの原因になることを避ける)
  • 付言事項で想いを伝える(相続人の理解を得るため)
  • 確実に見つけてもらうために、法務局の保管制度を活用する

「いつか書こう」と思っている間に、タイミングを逃してしまうこともあります。
大切な家族に負担をかけないためにも、早めに遺言書を準備し、適切に保管しておきましょう。