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初公開:2015年1月3日

第1回追記:2016年2月12日

第2回追記:2016年7月4日

第3回追記:2016年8月25日

2016年8月現在、民泊に関して判明している情報やニュースを一通りまとめました。

順を追って読んでいっていただければ、2016年8月までの民泊に関する規制緩和の動きや、民泊に関する法律的な問題点はある程度理解できるかと思います。

民泊って何?という方から民泊での許可取得を実際にお考えの方まで、参考にしていただければ幸いです。

0.民泊とは

現状、民泊についてのはっきりとした定義づけはされていませんが、従来では主に民家に宿泊することを民泊と呼んでいました。

最近では、民家に主に外国人旅行者を宿泊させ、その対価を得ることを民泊と呼んでいます。もっとも、airbnbを初めとした投資としての民泊を始める方の増加につれ、民泊という言葉が単に簡易な方法で行う宿泊業一般をさすような意味でも使用されています。

民泊で行っていることの実質は旅館業です。ホストはゲストから宿泊の対価をもらい、宿を提供する。それは旅館業以外の何物でもありません。

したがって、旅館業法上の許可を取得せずに行う違法な民泊のことを「ヤミ民泊」と呼ぶ場合もあります。

2016年6月20日に開催された「民泊サービス」のあり方に関する検討会での最終報告書にはこうあります。

「民泊サービス」とは住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して、宿泊サービスを提供するものとする

参照:「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書

この報告書では、民泊サービスを住宅を利用して行う宿泊サービスに限定していますが、その実質は旅館業法上の規制対象となる「旅館業」なのです。

1.airbnbでの民泊

さまざまな議論を呼んでいる民泊についての法規制を理解する為には、まずはairbnbについての理解が不可欠となります。

airbnbとは、民泊仲介サイトのサイト名であると同時に、アメリカサンフランシスコに本社を置く企業のことです。airbnbは、近年話題となっているシェアリングエコノミーサービスの中でもとりわけ民泊サービスを提供しています。

airbnbは、ホストと呼ばれる部屋の提供者とゲストと呼ばれる宿泊者をつなぐ役割をし、そこには民泊仲介サイトを通じてホストは宿泊者を泊め、ゲストはそれに対して宿泊料を払うという関係があります。

日本法人は2014年5月に立ち上がっていますが、当時は今ほど民泊というワードも定着しておらず、一部のホストの間でのみairbnbでの民泊が行われていました。

日本でairbnbが知名度を得たのは2015年に入ってからです。2015年後半でのairbnb上での登録物件数の急速な伸びは、以下の登録物件数の推移を見ていただければわかるとおり急速なものとなっています。

年月日 登録物件数
2015年4月 8,000件(2015.4.7 日本経済新聞より)
2015年12月 21,000件
(2015.12.14 第2回民泊サービスのあり方に関する検討会資料より)
2016年6月 35,000件

1-1.民泊の違法性

airbnbでの民泊が浸透するにつれ、民泊には旅館業法上の許可が必要なのではないかという認識が徐々に顕在化してきました。

民泊はグレーゾーンであるとか、民泊は旅館業法上の簡易宿所にあたるのではないか、という議論がそれになります。

この点については、「民泊の問題点とその違法性(民泊は旅館業法に反するのか)」で詳しく説明していますので参考にしてください。

1-1-1.足立区英国籍男逮捕事件

airbnbを利用した無許可民泊での逮捕が大きく報じられた初めての事件は、足立区での英国籍男逮捕事件ではないでしょうか。

2014.5 無許可ホテル経営 英国籍男逮捕許可なく東京都足立区内で簡易宿泊所を営んだとして、警視庁保安課は16日までに、旅館業法違反の疑いで英国籍の男を逮捕した。賃貸の一戸建て住宅を勝手に宿泊施設にし、外国人旅行者らに有償で提供。同容疑者は昨年(2013年)11月から、木造3階建ての自宅の1~2階部分を宿泊施設として営業。宿泊施設部分は3部屋あり、延べ床面積は24・9平方メートル。外国人客を中心に、1泊1人2500~5000円程度で提供していた。

この事件は逮捕に至るまで10数回にわたり、足立区が男に対して旅館業法違反を警告していたという経緯があります。

この事件により、間接的ですが違法民泊に対しては旅館業法上の許可が必要との判断が示されたことになります。民泊という言葉自体が未だ定着していない時期に起きた事件でした。

2015年に入ってからは、airbnbでの違法民泊に関しては福岡県での判断が有名です。

1-1-2.福岡県議会での判断

2015年6月、福岡県議会定例会で正式に民泊の旅館業への該当性が認められています。airbnbでの民泊に旅館業への該当性が認められれば無許可状態での民泊は旅館業法違反となります。

「Airbnb」などのインターネットサイトを仲介した個人による空室賃貸が、旅館業法の許認可あるいは規制の対象となり得ることが明らかとなった。県は、「Airbnb」などを通じた個人による空室賃貸について「自宅の建物を活用する場合であっても、宿泊料とみなすことができる対価を得て人を宿泊させる業を営む者については、旅館業法の許可を取得する必要がある」とした。 福岡県議会2015年6月定例会予算特別委員会より

この判断は、airbnbでの民泊に対しての旅館業法上の許可について初めて行政側が正式に出したものになります。

1-1-3.京都マンション民泊業者逮捕事件

福岡県での正式判断から5か月後の2015年11月、京都府で大規模な旅館業法違反事件がありました。

京都市右京区のマンションで中国人観光客用の宿泊施設を営んだとして、右京署が5日にも、旅館業法違反(無許可営業)の疑いで、東京都千代田区の旅行会社の顧問の男(52)=東京都葛飾区=と、山形市の旅行代理店の役員の男(48)=山形市=の2人を任意で聴取する方針を固めたことが、捜査関係者への取材で分かった。容疑が固まり次第、書類送検する方針。2人は旅館業の許可を市から受けず、7~10月、千代田区の旅行会社が集めた観光客290人を宿泊させ、旅館を営んだ疑いが持たれている。1室当たり1泊6千円程度で提供され、各部屋ではベッドシーツの取り換えや宿泊客用に朝食が用意されるなどしていたという。マンション全44室のうち36室もの部屋を提供。

マンション44室中、実に36室もの部屋を宿泊施設として旅行者に提供していたということです。

規模が大きすぎて民泊というより、無許可ホテルという表現のほうが近い気がしますが、民泊が注目されている中での旅館業法違反事件だった為民泊案件として扱われた感じでしょうか。

ちなみに両名はその後、書類送検されています。

1-1-4.京都市、民泊対策チーム立上げへ

違法民泊対策に力を入れている京都市が2015年12月に「民泊対策チーム」を立ち上げました。具体的には、airbnbでの宿泊部屋情報と京都市における旅館業法許可取得業者情報とを見比べて違法民泊を排除しようというものです。

京都市は20日、個人宅に有償で旅行客らを泊める「民泊」が広がっていることに対応したプロジェクトチームを12月1日に立ち上げると発表した。まず、インターネット上に公開されている民泊施設の実態調査から始め、必要があれば指導する。早期に具体的な対策に踏み出す考えだ。京都市によると、マンションなどの空き部屋を宿泊希望者に仲介するサイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」に登録されている同市内の施設は約2500件あるという。実態調査ではインターネット上に公開された施設の情報と京都市が管理する旅館業の登録情報を照合し、法令に基づいて運営されているかを把握する。一部の物件については職員を派遣し、周辺住民の聞き取りなどを通じて、より詳細に調べる。

こうした判断や旅館業法違反事件は民泊元年である2016年にはより多くなってくると思われます。

京都マンション民泊業者逮捕事件と京都市での民泊対策チームについては、京都での書類送検と京都市の違法民泊狙い撃ち作戦で詳しく説明しています。
第5回「民泊サービスに関する検討会」資料で京都市が中間報告として調査状況を報告(2016年1月25日現在)しています。追記:2016年2月12日
平成28年5月9日付で京都市が調査結果の最終報告をまとめています。追記:2016年6月30日

1-1-5.京都市民泊110番を開設へ

増加す違法民泊に歯止めをかける為、京都市が民泊110番を開設するとのこと。日本初の自治体による民泊専用窓口の設置ということで大きく報道されましたが2016年6月30日現在、京都市のHPからその窓口は発見できません。

専用の電話番号とメールアドレスを用意し悪質なケースは刑事告発も視野にいれた活動を予定。

空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」をめぐる違法行為や近隣トラブルを防ぐため、京都市は市民からの通報を受ける専用窓口「民泊110番」を開設する。25日の市議会で門川大作市長が「悪質な事業者は断じて容認できない。市民からの情報を1カ所で受ける窓口を設ける」と答弁した。自治体が通報窓口を設けるのは異例という。2016年5月25日朝日新聞DIGITALより

1-1-6.大阪市書類送検事件

2016年4月、大阪市生野区で違法に民泊を営んだとして3名が書類送検されました。数ある違法民泊の中でもなぜこの案件のみが書類送検されたのか不明ですが、大阪では初の旅館業法違反事例として大きく報道されました。

 外国人観光客向けにマンションなどで無許可の「民泊」を営んだとして、大阪府警は26日、いずれも大阪市生野区の韓国籍の飲食業の女(71)、中国籍のレンタルビデオ店経営の夫(37)と韓国籍の妻(55)を、旅館業法違反(無許可営業)の疑いで書類送検し、発表した。「金もうけのためにやった」と全員、容疑を認めているという。2016年4月26日朝日新聞DIGITALより

1-1-7.大阪地裁でのマンション民泊に関する初判断

2016年5月に大阪地裁で民泊に関する初判断がありました。これまで、マンション民泊と管理規約との関係は非常に不明確な形のままでした。その点については~国交省、民泊にはマンション管理規約の改正が必要との見解について~を参照してください。

そんな中、大阪地裁によって違法に民泊を行っていた区分所有者に対する差し止めを命じる判決が出されました。民泊に関して司法の判断がされたのはこの事件が初であり、マンションでの民泊に関してこの判決の意義はとても大きいものになります。

マンションの部屋に旅行者を宿泊させる「民泊」の是非が争われた仮処分裁判で、大阪地裁が、マンション管理組合の主張を受け入れる形で部屋の区分所有者に差し止めを命じる決定を出したことがわかった。民泊を禁じる司法判断が明らかになるのは初めて。
決定は今年1月27日。管理組合の弁護士によると、理由は示されなかったが、所有者側は異議を申し立てなかったという。同弁護士によると、大阪市内にある100戸超の分譲マンションで、昨年3月頃から特定の2部屋に出入りする外国人が急増。
部屋の区分所有者から明確な説明はなかったが、管理組合は民泊を行っている可能性が高いと判断、昨年11月に仮処分を申し立てた。

1-1-8.東京不動産関連会社役員6人送検

2016年7月には、東京都台東区で不動産関連会社の役員等6名が書類送検されました。都内での大規模な違法民泊に関する書類送検事案ということで、新聞各社も報道しました。

詳細は、別記事にありますので参考にしてください。

東京での違法民泊で不動産関連会社が書類送検されました。で詳しく書いています。

2.適法な民泊へ

ここまでの説明で、旅館業法上の許可を得ずに行う民泊=airbnbが違法なものであるとの点については理解していただいたかと思います。

ここからは、その違法な民泊を適法な民泊に変える為の手段をいくつかご紹介いたします。

まずは、特区民泊と呼ばれるものについてです。

2-0.特区民泊とは

特区民泊とは、国家戦略特区内で行う旅館業法の適用が除外された民泊のことです。特区内では一定の要件下で旅館業法の適用が除外されます。民泊を適法に行う為の手段として2016年1月29日に東京都大田区が全国に先駆けて特区民泊の申請受付を開始しています。

では、特区民泊の基礎となっている国家戦略特別区域法とはどんな法律なのでしょうか。

2-1.国家戦略特別区域法

2013年12月に成立した国家戦略特別区域法(以下、特区法)では、その13条で特区内での一定要件を満たした民泊に対しては旅館業法の適用除外を規定しています。

そして、この特区法での旅館業法適用除外を使えば前述の通り特区内での旅館業法の適用は除外され、その結果airbnbでの民泊も適法になります。

しかし、特区法という法律のみでは旅館業法の適用除外を実際に受けることはできず、その実現の為には各自治体レベルでの条例・規則の制定が必要となります。

※東京都大田区では、2016年1月29日より、大阪府では2016年4月から特区民泊がスタートしています。

特区法での旅館業法適用除外に関しての詳しい内容は「特区での民泊が適法になる民泊許可(特定認定申請)とは」を参考にしてください。

2-1-1.特区

特区法に基づく政令は、規制緩和を実施する特区を定めています。旅館業法適用除外を受ける為には、民泊施設が特区内になければなりませんから特区がどこかという問題は特区民泊を行う場合にはとても重要な問題です。

2016年1月29日に「国家戦略特区を定める政令」が改正され千葉県千葉市、広島県、愛媛県今治市、福岡県北九州市の4つの自治体が追加されました。

平成26年5月1日に第一次指定として以下の地域を特区としています。

  1. 東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市) ※東京都の区域については平成27年8月28日に東京都全域に区域を拡大
  2. 関西圏(大阪府、兵庫県及び京都府)
  3. 新潟県新潟市
  4. 兵庫県養父市
  5. 福岡県福岡市
  6. 沖縄県

平成27年8月28日に以下の3地域を指定しています。

  1. 秋田県仙北市
  2. 宮城県仙台市
  3. 愛知県

平成27年12月15日に3次指定として以下の3地域を指定しています。

  1. 広島県・愛媛県今治市
  2. 千葉市 (東京圏の拡大)
  3. 北九州市 (福岡市に追加)
参考:新たに特区として広島県・千葉市・愛媛県今治市・北九州市を追加予定
参考:特区政令の改正による福岡市・北九州市での民泊許可の可能性

2-1-2.民泊条例・規則

旅館業法の適用除外を受ける為の各自治体での条例・規則がいわゆる民泊条例・規則と呼ばれているものです。

この民泊条例・規則については特区法が成立してから実に2年近くもの間、どの自治体でも制定されていませんでした。したがって、旅館業法適用除外によるホワイト民泊の可能性は全く注目されることなく2年近く放置されていたのです。

もっとも、唯一大阪府だけが特区法成立の9か月後にあたる2014年9月に民泊条例の制定を試みています。残念ながらその時には条例制定には至っていませんが、その後2015年10月に大阪府では全国初の民泊条例が成立しています。

2-1-3.特区民泊(特定認定)の要件・必要書類

特区民泊の為には満たさなければならない要件があります。国レベルでの要件は国家戦略特別区域法施行令12条で定められています。

要件

詳細は、大田区、特区民泊の条件を徹底解説しました。で詳しく説明していますので参考にしてください。

必要書類

詳細は、民泊許可(特定認定申請)に必要な6つの書類と記載事項で詳しく説明していますので参考にしてください。

 

2-1-4.各自治体での動き

民泊条例については、2016年8月現在大阪府、東京都大田区、大阪市の3つの自治体で成立しています。

大田区

大田区での民泊条例は2015年12月に成立しました。大阪府に続き全国で2番目の成立となります。東京での条例制定は初めてですので、大田区の民泊条例が今後多くの自治体でのモデルケースになるはずです。

2016年1月27日に大田区で開催された第1回無料説明会には200名が参加しました。その後、2016年1月29日より大田区での特区民泊特定認定の申請が受付開始となりました。

2016年8月23日時点で大田区の特区民泊認定施設は23施設となっています。

大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)認定施設一覧

大田区民泊条例

大田区民泊規則

大田区民泊ガイドライン

大田区での民泊条例についての詳しい内容は「大田区、特区民泊の条件を徹底解説しました。」で詳しく解説していますので参考にしてください。
大阪府

大阪府の民泊条例は全国初で成立しました。2015年10月に成立し、その運用(民泊許可申請)は2016年4月から開始されています。2016年8月25日時点で大阪府が認定した特区民泊施設は3件のみとなっています。

大阪府国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(いわゆる「特区民泊」)に関する情報提供

国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業特定認定施設一覧

大阪市

大阪市での民泊条例は2016年1月15日に成立しました。施行日は2016年10月以降となっています。

参考:ついに制定!大阪市民泊条例を徹底解説。
北九州市

北九州市は、2016年8月25日時点で議会が特区民泊条例案を取り上げ、北九州市が特区民泊条例制定にあたり意見募集を行っています。

詳細は、別記事を参考にしてください。

参考:北九州市での特区民泊の最新情報
参考:北九州市での特区民泊の最新情報・続編

2-1-5.民泊条例の注意点

民泊条例・規則には各自治体によって民泊実施可能地域があります。民泊条例・規則が成立したらどの地域でも民泊が可能になるわけではありませんので注意が必要です。

大田区での民泊実施可能地域はこちらのPDFを参照してください。

大阪府での民泊実施可能地域については「大阪府での民泊実施可能地域が公表されました」で詳しく説明しています。

2-1-6.民泊実施時の本人確認・近隣住民への配慮

民泊条例・規則に基づいて民泊を実施する場合には、旅行者への本人確認や近隣住民への配慮が求められます。民泊実施に関しては、その法律的な問題点と同様に宿泊者の本人確認・近隣住民への配慮が大きな課題となります。

その点でのガイドラインが平成27年7月31日に内閣府より各自治体へ通達された「外国人滞在施設経営事業の円滑な実施を図るための留意事項について」です。

特区内で民泊を実施する場合には、このガイドラインに則った運営が求められます。

詳しくは「民泊の際の身元確認、近隣住民への影響に対する一定の方向性」で説明していますので参考にしてください。
特区民泊での近隣住民への周知について

特区民泊では、近隣住民へ民泊施設であることへの周知が義務付けられています。マンションの場合や戸建の場合等で様々問題があります。民泊での近隣住民への周知を徹底解説!で詳しく書いていますので参考にしてください。

特区民泊でのごみ処理方法について

特区民泊でのごみは、一般家庭から出るごみとは区別され事業系ごみと分類されます(大田区での場合)。詳しくは、民泊でのごみ処理方法について:大田区での特区民泊の場合を参考にしてください。

2-1-7.マンションでの民泊

マンションでの民泊に関しての最大の問題点はマンション住人との関係でしょう。構図としてはマンションでの民泊を排除したいマンション住人側対マンションでの民泊を行いたい民泊運営者側という形になります。

民泊禁止マンション

この点について、2015年12月に大きく報道された住友不動産の民泊禁止マンションはまさにマンション住人側の需要をいち早く取り入れたものでした。

民泊禁止の新築マンション 住友不動産、住民の不安考慮

 東京都大田区で民泊を認める条例案が可決された一方、不特定多数がマンションに泊まることを不安に思う住人がいる。住友不動産はこうした事情を考慮し、年内にもあらかじめ民泊をできないようにした新築マンションを発売する。               2015/12/8日本経済新聞 電子版より

もっとも、この場合ははじめから管理規約でマンションでの民泊を禁じている場合ですので、民泊とマンション規約という点では論点としては若干ぼやけてしまいます。

標準管理規約での民泊

マンションで民泊の場合の問題の所在は、上で説明したあらかじめ管理規約でマンション民泊を禁じている場合ではなく、マンションの標準管理規約のままで民泊を行えるかという点にあります。

つまり、マンションの管理規約で事前に民泊に関して何ら触れていない場合、そこでの民泊は管理規約違反になるのかということです。

国土交通大臣発言

この点については、2015年12月22日に行われた定例会見での国土交通大臣の発言が参考になります。

国交省、区分所有マンションでの特区民泊実施には規約改正が必要と見解

石井啓一国土交通相は22日、閣議後の定例記者会見で、戦略特区内にある区分所有マンションで民泊を実施する場合は、マンション規約の改正が必要との見解を示した。

詳しくは、国交省、民泊にはマンション管理規約の改正が必要との見解についてで説明していますので参考にしてください。

この発言で国土交通相は、「マンションで民泊を行うには、マンション管理規約の改正が必要」と言っています。つまり居住用マンションで民泊を行う場合には「民泊可」とマンション管理規約を改正しなければならず、マンションの管理規約で事前に民泊に関して何ら触れていない場合はそこでの民泊は管理規約違反になるという事です。

マンション管理規約の改正には議決権数の4分の3以上の賛成が必要ですので、この発言によってマンションでの民泊は実質的に不可能になったと思われました。

内閣府からの「待った」

しかし、この発言に大して規制緩和で民泊を広げたい内閣府側が「待った」をかけました。

民泊利用、マンション規約改正必要? 政府内で意見対立

マンション規約が部屋の利用を「住宅」に限っていたら、自室に他人を泊めて料金をもらう「民泊」には使えない――。今月、こんな通達を出そうとした国土交通省に、規制緩和で民泊を広げたい国家戦略特区についての会議の民間委員らが「待った」をかけた。いまも通達は出ていない。

2015/12/31朝日新聞デジタルより

この内閣府の「待った」によって現状では(2016年1月 2016年2月)マンションでの民泊の可能性は首の皮一枚で繋がっている状態です。

国交省側の意見が通れば、民泊にはマンション管理規約の改正が義務づけられる為、マンション民泊は実質的に不可能になります。

反対に内閣府側の意見が通れば、民泊にはマンション規約の改正は不要でありマンション民泊が可能になります。

以上のようにマンションでの民泊に関しての管理規約の点については今後の動向に注意する必要があります。

もっとも、仮に管理規約の面で障害がなくなったとしても、マンションでの民泊の場合にはマンション住民との軋轢は避けられない気がします。

大阪地裁でのマンション民泊に関する初判断

そんな中、2016年5月に大阪地裁でマンションでの民泊に関する初判断がありました。

管理規約中に「専ら住居として利用する」との条項があった場合における仮処分裁判で、大阪地裁は2部屋の区分所有者に対して差し止めを認める決定を行っています。

 2-2.旅館業法改正から新民泊制度へ

これまでは、特区法を利用した民泊の適法化について説明してきました。しかし、特区民泊は思ったほど浸透せず2016年8月時点で全国で3つの自治体でしか条例は制定されていません。

他方で特区民泊と同時進行で進んでいた民泊に関する議論があります。

それが、「民泊サービスに関する検討会」での議論です。

2-2-1.旅館業法改正

2015年11月、政府は使い勝手の悪い旅館業法を改正し、今後の民泊に関する規制緩和を議論する場として「民泊サービスのあり方に関する検討会」を立ち上げます。

この検討会では、厚生労働省・国交省・観光庁の役人と民泊に関連する企業等の出席者が民泊の今後に関して問題点をあぶり出し、規制緩和について話し合われました。

この検討会は、「規制改革実施計画」(平成27年6月30日閣議決定)で決定した民泊への規制緩和について検討するもので、ここでの動きそのものが民泊への規制緩和につながっていきます。

この検討会は特区での民泊に対する旅館業法適用除外とは別の動きになりますので、注意が必要です。

まず、民泊サービスのあり方に関する検討会での議論の結果として2016年4月1日、旅館業法が改正され簡易宿所の最低床面積要件と玄関帳場についての改正が行われました。

もっとも、この旅館業法の改正は有名無実なもので実際の許可取得時にほとんど意味のないものとなっています。詳しくは4月からの旅館業法改正と東京23区の玄関帳場(フロント)の現状を参考にしてください。

2-2-2.新民泊制度の創設

「民泊サービスのあり方に関する検討会」はその後も月に1回~2回の開催ペースで進められ、議論の矛先は「旅館業法改正」から「新民泊制度」の創設へと移っていきました。今ある旅館業法を改正するのではなく、新しく日本型民泊の為の新制度を創設していこうということです。

民泊新法という言葉もこういった流れの中で出てきたものです。

その後、2016年6月2日に政府が閣議決定した規制改革実施計画には検討会での議論を加味した新民泊制度の概要が記載されています。「民泊サービスのあり方に関する検討会」での最終報告書にも同様の新民泊制度創設についての案が記載されています。

6月2日閣議決定規制改革実施計画

旅館業法の改正から新民泊制度の創設が決定したところで「民泊サービスのあり方に関する検討会」は2016年6月20日の第13回開催分でその役目を終えました。

2-2-3.民泊サービスのあり方に関する検討会

各回ごとの配布資料と要点をまとめてあります。

第1回 平成27年11月27日

配布資料はこちらから

第2回 平成27年12月14日

配布資料はこちらから

第2回の注目点と感想は、第2回民泊サービスのあり方に関する検討会資料からで詳しく説明しております。

第3回 平成27年12月21日

配布資料はこちらから

第3回の注意点と感想は、第3回民泊サービスのあり方に関する検討会資料からで詳しく説明しております。

第4回 平成28年1月12日

第4回の注意点と感想は、第4回「民泊サービス」のあり方に関する検討会資料から①第4回「民泊サービス」のあり方に関する検討会で出てきた参考資料の検討②で詳しく説明しています。

第5回 平成28年1月25日

第5回の注意点と感想は、第5回「民泊サービス」のあり方に関する検討会の感想、京都市・港区・新宿区・渋谷区での民泊対策で詳しく説明しています。

第6回 平成28年2月29日

配布資料

第7回 平成28年3月15日 「民泊サービス」のあり方について(中間整理)

配布資料

第8回 平成28年4月12日

配布資料

第9回 平成28年4月22日

配布資料

第10回 平成28年5月13日

配布資料

第11回 平成28年5月23日

配布資料

第12回 平成28年6月10日

配布資料

第13回 平成28年6月20日

最終報告書

2-2-4.民泊新法

民泊サービスに関する検討会によって方向性が決まった日本の民泊ですが、民泊新法なる法律は2016年7月現在は制定されていません。現在では新民泊制度の骨子案があるのみです。もっとも、今後日本の民泊制度はこの新民泊制度がメインとなりますので、この制度の理解も必要になります。

詳細は、規制改革実施計画閣議決定!新民泊制度を徹底解説しました!で詳しく解説していますので参考にしてください。

以下に民泊新法に関する記事をまとめました。

2-3.正攻法での民泊

特区民泊から新民泊制度へと移ってきた民泊ですが、これらの制度を使って合法的に民泊許可を取得してもその運営には何らかの足かせがついてきます。

例えばそれは、特区民泊の場合であれば最低宿泊日数の「6泊7日」であったり、新民泊制度では、年間上限宿泊日数の「180日ルール」だったりします。

現状ある民泊制度を使って簡易的な方法によって民泊許可を取得する場合には必ずこれらの足かせがついてきます。

もっとも、正攻法で旅館業法上の許可を取得すればその足かせは完全に外れます。旅館業法上の許可というのは、「簡易宿所」又は「旅館」・「ホテル」としての許可のことです。許可取得の為には満たさなければならない要件が多くあり、設備投資も必要となります。

簡単には取得できませんが、現状ではこの方法が一番確実です。そして、簡易宿所・旅館ということになればもはや民泊を巡る政府の議論の範疇外ですので、普遍的に民泊を行うことが可能になります。弊所でもこの方法をお勧めしています。

以下に、正攻法での民泊を行う為に必要な簡易宿所・旅館業許可に関する記事をまとめておきますので参考にしてください。

 

2-4.イベント民泊

イベント民泊については、福岡市での嵐とEXILEの民泊と言った方がピンとくる方もいらっしゃるでしょう。

これは、先ほど触れた「規制改革実施計画」(平成27年6月30日閣議決定)での「小規模宿泊業のための規制緩和①(イベント等を実施する際の「民泊」における規制緩和)」を利用したものです。

イベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いケースについては、旅館業法の適用外となる旨を明確にし、周知を図る。

特定のイベント開催時に限って自治体の判断で旅館業法の適用除外を行い、民泊を一定期間のみ認めるというもの。

福岡市での効果はあまり芳しくないものだったようですが、今後イベント民泊が定着し地方での瞬間的な宿泊施設不足に対応できればいいですね。

福岡市でのイベント民泊については、福岡市での嵐・EXILEイベント時の民泊についても参考にしてください。

 

3.民泊に関する各国・各事業者の動き

シェアリングエコノミーサービスの代表格である民泊に関しては、各国でも規制形態を模索中です。以下主要国の規制緩和と規制強化を説明します。(第2回民泊サービスのあり方に関する検討会airbnb提出資料より)

各国の規制緩和の動き

ロンドン

40年間あった法律が廃止され、2015年3月にロンドンにある主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。

ポルトガル

2015年3月に主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。

フランス

2014年3月にフランス全土の主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。 第二の住まいの賃貸も許可されているが、都市によって規則が定められる。

アムステルダム

2014年2月に主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。

ハンブルク

2013年7月に主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。

オーストラリア

2013年12月にビクトリア州で短期賃貸を許可する判決。2014年8月にはクイーンズランド州でパーティーハウス以外のすべての短期賃貸を許可する法律が成立。

カリフォルニア州サンフランシスコ

2014年10月より14%の短期滞在税、1回の宿泊につき30日未満かつ年間90日間のみ認められる。

オレゴン州ポートランド

戸建住宅につき認可申請料178ドルを支払い、物件調査、隣人への通知が必要。

パリでの賃貸住宅不足

airbnbによって民泊が知名度を得た結果、過去5年間で約2万部屋が従来の賃貸市場から消える。賃貸で運用するよりAirbnbで民泊を行ったほうが儲かるとの判断。

各民泊事業者

ここでの民泊事業者とは、民泊代行サービスを行っている事業者ではなく、民泊のプラットフォームとしての事業者をとりあげています。

airbnb

民泊サービスを提供するプラットフォームの筆頭企業。airbnbサイトへ

自在客

airbnbに次ぐ巨大民泊プラットフォーマー。自在客サイトへ

HomeAway

2005年2月設立。airbnbのライバルとしてシンガポールに拠点を置き、主にバケーションレンタル最大手として民泊を行う。HomeAwayサイトへ

roomorama

日本での物件数はまだ少ない。今後の展開に期待。roomoramaサイトへ

STAYJAPAN

とまれる株式会社が運営する日本での民泊プラットフォーム最大手。現状では、東京都大田区での特区民泊で許可を得た物件のみを掲載予定。2016年1月大田区での旅館業法適用除外が開始しだい運用開始。 STAYJAPANサイトへ

APAMAN B&B

株式会社アパマンショップネットワークが運営する民泊サービス。STAYJAPAN同様に特区民泊での運用を2016年1月以降開始する。APAMAN B&Bサイトへ

4.まとめ

民泊元年となる2016年は、多くの自治体で民泊条例が制定され、実際に日本で民泊が浸透しはじめる年となります。多くの批判や混乱の中、始まるであろう民泊に対して今後は各種規制が具体的に明らかになってくると思います。

政府がオリンピックに向けて民泊主導で走り始めているのは各種の資料から見ても明らかです。規制緩和は字面だけではなく、本当の意味で実現していただきたいと思います。


本当は、2015年の総まくりとしてこの記事を公開したかったのですが、2015年に間に合いませんでした。

2016年8月25日現在までの最新情報となっています。

この記事を書いたのは民泊実務集団TEAM NanatsuBaです

簡易宿所・旅館業・特区民泊許可取得の為の施設設計・デザイン・施工・各種許可申請を行政書士・建築士をはじめとした専門家チームで行います。行政書士・建築士・不動産会社・工事施工会社等、宿泊業のプロフェッショナルが物件紹介から施工までワンストップでサポートします。詳細はこちらから。

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冬木 洋二朗

冬木 洋二朗

代表・行政書士Team NanatsuBa
民泊実務集団TEAM NanatsuBa代表。 行政書士。 適法・合法な民泊運営の為の各種許可申請代行を専門家チームで行っております。これまで、上場企業から個人投資家まで多くの方とご一緒にお仕事をさせていただきました。2014年から、当ブログで情報発信をしています。