12月14日に行われた「第2回民泊サービスのあり方に関する検討会」での資料が厚生省のサイトで公開されています。各団体の偉い方々が出席し、今後の民泊に関する法規制の方向性を決めていこうという例のやつです。
その中で参考になる資料や、気になる資料を公開していきます。
厚生労働省が提出した「旅館業法について」という資料について。
その中に①旅館業法の適用判断についてという部分と②旅館業法に関するQ&Aというものがあります。
1.旅館業法の適用判断について
このブログでも記事にしていますが、今まで旅館業法が適用される「旅館営業」とは以下のような4つの要件を満たす行為でした。
①宿泊料を受けていること
②寝具を利用して施設を利用すること
③施設の管理経営形態を総合的にみて、施設の衛生上の維持管理者が営業者にあること
④宿泊者が宿泊する部屋に生活の本拠を移さないことを原則として営業していること
この要件に変更はないですが、資料ではより民泊(Airbnb・エアビーアンドビー)との関連性を意識して要件を挙げ、①社会性の有無と②継続反復性の有無という2つの要件が加わっています。
より正確には加わっているというよりかは、旅館業法該当性判断の際の前提要件を民泊対策として顕在化させたような感じです。
見てみましょう。
①社会性の有無
後で説明しますQ&Aでの回答を参考にすると、どうやら民泊判断における「社会性」とは「社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為として行われるもの」ということらしいです。
はっきりしない表現ですが、ようは普通の生活ではないレベルで宿泊させる行為を行っている場合のことです。それを、旅館業法の適用判断では「社会性」といいます。
そして、その「社会性」を有する宿泊行為は、旅館業法適用の対象となるという事ですね。具体的には、不特定の者を宿泊させる場合や、広告等によって広く一般に募集を行っている場合には社会性ありと判断されます。
②継続反復性の有無
継続反複性については、宿泊行為を「業」として行っているかという判断とも重複してくる要件です。
継続反復性が有りと判断されれば旅館業法の適用対象となる方向性が強くなります。
具体的には、宿泊募集を継続的に行っている場合や、曜日限定・季節営業など営業日を限定した場合でも繰り返し行ってればそれは反復継続といえます。
以上が、資料から読み取れる旅館業法の適用判断上の要件です。
おそらく今後は自治体も従来からの4要件と①社会性の有無と②継続反復性の有無という、合計で6つの要件を基準として民泊の旅館業法適用性を判断していくことになるでしょう。
2.旅館業法に関するQ&A
資料には、旅館業法の適用に関するQ&Aもあります。そして、注意書きには「平成27年11月27日付け生活衛生・食品安全部長通知において、各自治体に情報提供したもの」とあります。
平成27年11月27日って、かなり最近ですね。
てことは、この通知でのQ&Aは完全に民泊(Airbnb・エアビーアンドビー)を意識して作ったものということですね。
こういったものが旅館業許可に関しては今までなかったですから、役所の通知だけで終わらせないで是非一般に広く周知すべきだと思うんですけどね。
長いですが、全部書いておきます。
Q1 旅館業とはどのようなものですか。
A1 旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
そのため、「宿泊料」(Q7参照)を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けません。
なお、旅館業がアパート等の貸室業と違う点は、①施設の管理・経営形態を総 体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあ ると社会通念上認められること、②施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこととなります。
Q2 個人が自宅の一部を利用して人を宿泊させる場合は、旅館業法上の許可が必要ですか。
A2 個人が自宅や空き家の一部を利用して行う場合であっても、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合(Q1参照)には、旅館業法上の許可が必要です。
Q3 知人・友人を宿泊させる場合でも旅館業法上の許可は必要ですか。
A3 旅館業に該当する「営業」とは、「社会性をもって継続反復されているもの」 となります。
ここでいう「社会性をもって」とは、社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為として行われるものであり、一般的には、知人・友人を宿泊させる場合は、「社会性をもって」には当たらず、旅館業法上の許可は不要と考えられます。
Q4 インターネットを介して知り合った外国の方が来日した際に、自宅の空き部屋に泊まってもらいました。その際、お礼としてお金をもらいましたが、問題ないでしょうか。
A4 日頃から交友関係にある外国の方を泊められる場合は、Q3の場合と同様と考えられます。
ただし、インターネットサイト等を利用して、不特定多数の方を対象とした宿泊者の募集を行い、繰り返し人を宿泊させる場合は、「社会性をもって継続反復されているもの」に当たるため、宿泊料と見なされるものを受け取る場合は、旅館業の許可を受ける必要があります。
Q5 営利を目的としてではなく、人とのコミュニケーションなど交流を目的として宿泊させる場合でも、旅館業法上の許可は必要ですか。
A5 人とのコミュニケーションなど交流を目的とすることだけでは旅館業法の対象外とならないため、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合(Q1 参照)には、旅館業法上の許可が必要です。
Q6 土日のみに限定して宿泊サービスを提供する場合であっても、旅館業法上の許可は必要ですか。
A6 日数や曜日をあらかじめ限定した場合であっても、宿泊料を受けて人を宿泊させる行為が反復継続して行われる場合は、旅館業法上の許可が必要です。
Q7 「宿泊料」ではなく、例えば「体験料」など別の名目で料金を徴収すれば旅館業法上の許可は不要ですか。
A7 「宿泊料」とは、名目だけではなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費などが含まれます。
このため、これらの費用を徴収して人を宿泊させる営業を行う場合には、旅館業法上の許可が必要です。
Q8 旅館業法上の許可を受けないで、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」を 行った場合はどうなりますか。
A8 旅館業法第10条では、許可を受けないで旅館業を経営した者は、6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処することとされています。
Q9 旅館業法上の許可を受けるにはどうすればいいですか。
A9 使用する予定の施設の所在する都道府県(保健所を設置する市、特別区を含む。)で申請の受付や事前相談等を行っています。
一般的な旅館・ホテル事業を開始する場合のQ&Aではなく、完全に民泊(Airbnb・エアビーアンドビー)ver.になってますね。
参考にしていただければ幸いです。
冬木 洋二朗
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