最近は、徐々に民泊新法の問い合わせが増えております。
増えているのは本当にありがたいことなのですが、お問合せをいただく方のほとんどは、民泊新法についてよくわからない状態でお問合せをいただきます。
用途地域による日数制限や不在型の区別なんかは、ご自身で収益を考える際に非常に大切な要素となります。ここの収益の部分がクリアになっていないとなんだかよくわからずに民泊初めました。
でも、年間120日程度しか営業できませんでした・・・みたいな感じになってしまいますので、今日は民泊新法(住宅宿泊事業法)で民泊をはじめる前に最低限知っておきたいチェックポイントとして6つのポイントについて触れております。
まずは、ここで民泊を始めるにあたってのコスト面と必要な設備についての概要をしっかりと把握しておきましょう。
1.180日制限の把握
民泊新法では1年間に営業できる日数は180日までと決まっています。まで、というのがミソでしてこの180日ルールは自治体側で180以下の日数にすることもできます。ここら辺は有名な話しですので十分ご承知かと思います。
したがって、日数制限を考えるうえで自分の物件がある地域はどこなのかが非常に、非常に重要になってきます。
東京での自治体別180日制限のまとめ
東京であれば23区とそれ以外では日数規制が異なりますし、23区の中でも様々な日数制限があります。
東京の自治体の営業日数規制を4つのカテゴリーでまとめました。
①日数制限がない自治体
このカテゴリーの自治体は用途地域や不在型の区別なく、どんな地域どんなスタイルでも年間180日間民泊ができる自治体です。営業日数規制を条例で上乗せしていない自治体です。
- 豊島区
- 北区
- 墨田区
- 葛飾区
- 江戸川区
- 特別区以外の自治体(市街化調整区域の場合には開発課に要相談)
②用途地域による日数制限あり
このカテゴリーは、届出住宅がある用途地域によって年間営業日数が変わってきます。基本は住居専用地域での平日営業の制限です。その他、大田区のように一定の用途地域では一切民泊ができないという自治体もあります。平日営業が制限され、休日のみ民泊をする場合には年間でだいたい120日程度の営業日数となります。
- 大田区:住専・工業・文教地区では営業不可
- 新宿区:住専では平日営業不可
- 文京区:住専・住居地域・準工業・文教地区では平日営業不可
- 品川区:商業・近隣商業以外の地域では平日営業不可
- 渋谷区:住専・文教地区では大型の休み以外は営業不可
- 世田谷区:住専では平日営業不可
- 中野区:住専では平日営業不可
- 練馬区:住専では平日営業不可
- 板橋区:住専では平日営業不可
- 足立区:住専では平日営業不可
用途地域とは、都市計画法上に定められたものであり、その内容はその地域の用途に応じて13種類に分類されています。用途地域については、簡易宿所・旅館業を行う場合の用途地域規制の調査方法の記事で詳しく書いています。 |
③用途地域・不在型による日数制限あり
このカテゴリーは、用途地域による制限と、不在型による制限のダブルスタンダードを採用している自治体です。
家主居住型・不在型についての詳しい解説は下記「2、居住型・不在型の区別」を参考にしてください |
基本は、不在型の場合には平日営業が不可になります。かなり特殊なのは千代田区で、千代田区では用途地域以外に人口密集地域という独自基準をもうけています。したがって、千代田区では用途地域、不在型、人口密集地域という3つの軸による制限があります。
管理者常駐型というのは、不在型でも管理業者のスタッフが常駐できる場合のことをいいます。
- 台東区:居住型か不在型かで営業日数を制限。不在型の場合は用途地域関係なく平日の営業不可。居住型又は不在型の管理者常駐型は営業日数制限なし。
- 港区:居住型か不在型かで営業日数を制限。不在型で住専・文教地区では大型の休み以外は営業不可。居住型は営業日数制限なし。
- 千代田区:居住型か不在型かで営業日数を制限。不在型(管理者駆け付け型)では文教地区及び学校等周辺100m範囲内では全日営業不可、人口密集地域では平日営業不可、それ以外は180日営業可。居住型又は不在型の管理者常駐型は文教地区及び学校等周辺100m範囲内では平日営業不可、それ以外は180日営業可
- 杉並区:居住型か不在型かで営業日数を制限。不在型で住専地域では平日営業不可。居住型は営業日数制限なし。
④区内全域で平日の営業を制限
このカテゴリーが一番規制が厳しいです。ここのカテゴリーの自治体では問答無用で平日民泊ができません。地域とか関係なく区内全域ですのでここのリスティングはほぼ皆無になりそうです。逆に旅館業でやるならここのカテゴリーがいいかもしれませんね。ライバルが一瞬にしていなくなりますから。なので、中央区はかなり狙い目ですね。
- 江東区
- 中央区
- 荒川区
- 目黒区
あと、注意点を1つだけ。
全カテゴリー通して平日と一言でいっていますが、平日の定義は自治体によって異なる場合があります。例えば新宿区は月曜日の正午から金曜日の正午を平日としてますが、品川区なんかは月曜日の正午から金曜日の正午までを平日としています。(正確には自治体では平日、休日の定義はしていませんが、説明の都合上ここでは平日と休日と説明しています)
この点は、しっかりと調べてください。
2.居住型・不在型の区別
これは、上の日数制限のところでも触れていますが、民泊新法では居住型と不在型の区別があります。
居住型というのは、届出住宅にホストが居住している場合のこと。居住型ではゲストがいる間、ホストは常に家にいなければなりません。ホストが家を空けていいのは日用品の買い物などで1時間~2時間程度となります。
反対に不在型とは、自分が住んでいない又は届出住宅に常駐できない場合のことです。この場合には、届出住宅の管理を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。委託には、当然管理料が発生します。だいたい売上又は利益の10パーセントから20パーセントが相場じゃないでしょうか。
したがって、民泊代行会社なんかを利用して不在型民泊をはじめようという方は、この委託料をしっかりとコストとして把握しておかなければなりません。
管理業者に委託しなくても良い場合
もっとも、管理業者への委託は例外もありまして①自分が住んでいる建物が届出住宅と同じ建物又は同じ敷地にある場合や隣接している場合で②届出住宅が5物件までであれば自ら管理することが認められています。ただ、この場合にはゲストが騒いだりしているのをホストがしっかりと覚知できる必要がありますので、高層のRCなんかだと認められにくいかもしれません。
注意が必要なのは、この自ら管理できる例外の場合と、自らが住宅宿泊管理業者となって自らの物件を管理するというのは全く別問題ということです。
3.管理業者との距離の問題
不在型民泊を行う場合、住宅宿泊管理業者に対して民泊運営を委託しなければなりません。そして、管理業者の営業所は届出住宅から30分程度の距離になければなりません。これは、徒歩でも電車でも車でも30分程度で駆け付けられれば問題ありません。
駆けつけ業務のみの外注
ただ、これにも例外がありまして、管理業者が駆け付け業務だけを専門の業者に委託している場合は、その委託業者の営業所からの距離が基準となります。ですので、届出住宅の近くに管理業者があれば問題ありませんが、ない場合には駆け付け業務を届け出住宅の近くの専門業者に委託できる管理業者を選定することが必要となります。
まあ、もっともここら辺は代行会社の方は嫌でもそういった駆け付け専門業者を確保しなければなりませんので、あまり心配はないかと思います。ただ、コストはかさみますね。外注費も委託料の中から出さないとでしょうから。やはり、こうゆう点を考えても既存で拠点にできる営業所を多く抱える大手が有利になってくるかと思います。
4.届出住宅の使い方の問題
民泊新法の民泊では、民泊専用の物件というものは認められていません。これについては、住宅宿泊事業法(民泊新法)対象物件の3要件を解説しましたで触れていますので参照してください。
5.消防設備の問題
民泊新法で最もやっかいなのは、保健所の要件ではなく、消防法の問題です。
保健所で要求される住宅の要件は通常の住宅であれば問題なくクリアできます。これに対して、消防で求められる基準は旅館・ホテルと同じ基準です。届出住宅は消防法施行令別表第一5項イ、特定用途防火対象になります。
これは、通常の簡易宿所や旅館などと同じ基準です。新法での民泊は保健所的には住宅として扱いますが、消防的には何ら緩和はなく、旅館・ホテルと同じ基準です。
新法の届出の際の消防関係の添付書類としては、消防の相談記録のみが要求され適合証明書までは不要ですが、自動火災報知設備の設置義務がありますので、しっかりと消防検査はあります。
自動火災報知設備の問題
消防設備で最も費用がかかる部分が自動火災報知設備です。
例えば、200㎡程度のRC3階建ての共同住宅に通常の有線のものを導入するだけでで70万円~100万円程度はかかります。
300㎡以下の小規模施設なら例外もあり
ただ、これには例外もありまして、対象範囲が300㎡未満であれば特定小規模施設用自動火災報知設備というものが使えます。有線のものと異なり無線で感知器同士が連携できるので導入コストは低くなります。感知器だけであれば1個15,000円~20,000ぐらいです。
もっとも、特定小規模施設用自動火災報知設備が使用できるのは感知器の数15個までです。感知器数が15個を超える場合には通常の自動火災報知設備になりますのでご注意を。
どんな階段があるかが大切
さらに、特定一階段防火対象物というものがあります。
3階以上の建物で民泊を行う場合、地上まで通じる階段が内階段1つのみの建物がこれに該当します。3階以上の建物で民泊を行おうと考えている場合には要注意です。特定一階段防火対象物では特定小規模施設用自動火災報知設備は使えませんので、通常の有線の自動火災報知設備が必要になります。
通常、保健所への申請手数料よりも消防設備の工事費のほうがコスト的には高くなりますので、民泊をはじめよと思ったら真っ先にこの部分の確認をする必要があります。
あとは、民泊新法では安全措置の確保ということで、非常用照明の設置や防火区画等が要求されますが、それをここで書くと長くなりすぎるので、またの機会に分けて書こうかと思います。
以上が消防設備ですが、まず一番注意して見るべきポイントは民泊を行おうとしている部屋が3階以上なのかということです。3階以上であれば気合を入れて色々調査しなければならないということです。
6.近隣周知の問題
これはそこまで神経質になる必要はないかと思いますが、一応確認しておくに越したことはないです。
近隣に対する周知は申請の1週間から10日前までに終わらせおくがことがほとんどの自治体で要求されています。周知範囲は届出住宅の15mから20m程度の範囲まで。
近隣住民の反対がある場合
ここで、反対が出たらどうなんだという事をよく質問されますが、基本は届出なので反対がちょっとあったぐらいでは不受理にはなりません。よっぽど大規模な反対運動とかなら話しは別ですが、法で定まった手続きをしているだけですから反対も何もありません。
ただ、民泊は近隣住民との関係が最もトラブルになりやすいので、なるべく穏便に理解を得て民泊をはじめるのがいいですね。
まとめ
以上、民泊新法の大切なポイントを6つに絞って解説しました。どれも、収支に影響してくるコストの問題ですので、シビアに判断するのが良いかと思います。
冬木 洋二朗
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