住宅宿泊事業での民泊で必要とされる安全措置の続きです。
前回は民泊の安全措置とはなんぞやという事でその全体像について解説しました。
住宅宿泊事業での民泊の安全措置として講じなければならないことは以下の4つに集約されます。
- 非常用照明の設置について
- 防火区画が必要な場合について
- 自動火災報知機の設置について
- 届出住宅の規模によって必要な措置について
今日は、安全措置で必要とされる具体的な規制の中身として1.非常用照明の設置について見ていきましょう。
非常用照明とは
まず、非常用照明とは何かから。
非常用照明とは、建築基準法で定められている非常用の照明装置です。天井や壁の高いとことに設置し、停電時に照明が点灯します。
他の電気が全て消えた場合、非常用照明が点灯する仕組みになっています。災害などで停電が発生した際に活躍します。
こんな感じのものを天井に取り付けます。これが、非常時には唯一の明かりとなります。

非常用照明の設置については個数や設置場所が決まっていますので、建築審査課や建築士に相談しないと具体的な設置場所の判断はできません。
雰囲気としては非常口まで一定間隔で天井に設置するという感じです。
設置の判断基準
では、設置の判断基準をみてみましょう。この判断基準が国交省が出している安全措置の手引きなんかにも書いてある部分です。
まずは、大原則の確認。
非常用照明は①宿泊室と②宿泊室からの避難経路には、1つの例外を除き必ず設置が必要です。基本は、非常用照明は必須設備と考えていただいて構いません。
で、唯一の例外が以下の場合です。
設置が一切不要
宿泊室の床面積の合計が50㎡以下で、なおかつ家主居住型の場合には非常用照明の設置は一切不要です。この場合には大原則である「宿泊室」と「宿泊室からの避難経路」にも不要になります。
家主がゲスト滞在中も届出住宅にいますので、緊急時の管理も家主ができるでしょう、ということですね。
各部分ごとに設置の要否を判断する
上記の設置が一切不要の場合に当てはまらない場合には大原則どおり「宿泊室」と「宿泊室からの避難経路」には設置が必要になります。そして、さらに他の部分に設置が必要かどうかは、具体的に判断していくことになります。
外気に開放された通路、宿泊室・避難経路以外の場所
このような場所には、非常用照明の設置は不要です。外気に開放された通路とは、外廊下などのこと。宿泊室・避難経路以外の場所とは、トイレ、クローゼット、洗面所、浴室などのことです。
居室への設置の判断
宿泊室以外の各部屋への設置の判断で注意しなければならないのは、居室と宿泊室の違いです。
居室とは、宿泊者が占有する宿泊室以外の場所のことですので、リビングやキッチンや洗面所などの宿泊者が寝る以外で独占的に使用できる場所のことです。これに対して宿泊室とは、就寝に使う部屋のことですので、両者は別モノになります。
で、ここでは居室への非常用照明の設置をどう判断するかということが論点になっています。
これには3つの基準があります。3つの基準のうち1つでもあてはまれば設置は不要になります。
居室ごとに見ていって3つの基準にあたるかどうか判断していきます。理解する上ではリビングなんかを念頭に置いて考えてれば良いと思います。
①下記全ての条件を満たすか
- 避難階又は避難階の直上、直下階の居室であること(避難階とは普通は1階のことです)
- 採光に有効な開口部の面積の合計が居室の床面積の 1/20 以上であること
- 避難階では、居室の各部分から屋外への出口に至る歩行距離が 30m 以下、避難階の直上、直下階では居室の各部分から屋外への出口等に至る歩行距離が20m 以下であること
この3つ全てにあてはまる居室には非常用照明の設置は不要になります。
普通の2階建ての戸建てであれば、問題なくクリアできるかと思います。そんなに難しい基準ではありません。
②床面積が 30 ㎡以下の居室で、地上への出口を有するもの
これは、そのままです。30㎡以下の部屋で地上への出口があるかどうかで設置の要否が決まります。ほとんどの場合で1階のことを指しています。2階以上は次になります。
③床面積が 30 ㎡以下の居室で、地上まで通ずる部分が下記のいずれかに該当するもの
・非常用の照明装置が設けられたもの
・採光上有効に直接外気に開放されたもの
30㎡以下の居室というのは、②と同じですが、地上までに通る避難経路に非常用照明が設置してある場合や、開放された廊下などがある場合にはその居室の非常用照明は設置不要です。
2階以上の階の場合、これに該当する場合が多いです。
まとめ
以上、住宅宿泊事業法での民泊の非常用照明の設置基準でした。
大前提として、宿泊室と宿泊室からの避難経路には設置が必要ということ。ただ、その例外として設置が一切不要の場合があり、まずはその例外にあたらないか判断します。
次に、各居室ごとに設置の要否を判断し、その際の基準が3つ用意されている。
この3つのうちのどれかに該当すれば宿泊室以外の居室には非常用照明は設置しなくても良いという流れでした。
家主居住型以外の場合には、非常用照明設置が必要になりますので事前のチェックが大切になります。
では。
冬木 洋二朗
最新記事 by 冬木 洋二朗 (全て見る)
- 新型コロナ無利子・無担保融資情報 - 2020年3月30日
- 銀座地区での旅館営業を行う場合の地区計画について解説しました - 2019年12月25日
- 簡易宿所の工事を頼んでいた工事業者の倒産から学ぶ3つの倒産シグナル - 2019年12月24日