旅館業法の改正第2弾です。第1弾はこちら。
第1弾では、フロント設置義務以外の気になる改正点をまとめました。今回は、フロント設置義務についての改正で気になる点に触れていきます。
フロント設置義務の緩和
フロント設置義務に関する改正は、旅館業法施行令にあります。一番気になっているのは以前に概要として出ていた以下の部分。
玄関帳場等の基準の緩和
厚生労働省令で定める基準を満たす設備(ビデオカメラによる顔認証による本人確認機能等のICT設備を想定)を、玄関帳場等に代替する機能を有する設備として認めることとする。
ここにあるビデオカメラ、ICT設備による玄関帳場の代替は非常にインパクトのある改正です。これが、現実化すれば人件費を大幅に削減できます。
ですが、これは施行令と規則の改正に関してなので、あくまで国レベルの改正。実際は自治体レベルでの改正が行われなけば何の意味もありません。自治体の条例・規則が実務では何よりも大切です。国レベルでいくら騒いだところで、それが実務で実現できなければ全く意味がありません。
そして、旅館業法関連の法規の改正に関してはその傾向が非常に強い。
話しをもどしましょう。
改正の内容
改正旅館業法施行令はフロントに関する規定で「当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること」という文言を追加しました。この文言の具体化が旅館業法施行規則です。
みてみましょう。旅館業法施行規則第4条の3。
①事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること
②宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること
全然、具体的になっていませんがこの規定を解釈して①、②の要件というのはビデオカメラで良いのか、スタッフが常駐しなければいけないのかを決めるのが自治体の条例・規則になります。
よって、①事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること②宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること、を具体化する方法を決めるイニシアチブは自治体にあります。
それが、今までどおりフロントの設置+人員配置なのか、フロント設置+ビデオカメラ監視でOKなのかは、各自治体の判断に任されています。
旅館業における衛生等管理要領の改正
今回の改正で①、②のより具体的な内容を示した旅館業における衛生管理要領も改正されていますが、この部分には自治体を縛る拘束力はありません。
ついでに見ておくとこんな感じです。
次の全ての要件を満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができていること
1) 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているものであること。
2) 営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入りの状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること。
3)鍵の受渡しを適切に行うこと。
かなり具体的で実務でそのまま使えそうです。
ただ、何度もいいますがこれを採用するかどうかの判断は自治体次第です。
仮にこの要領のとおりに自治体がフロント設置について緩和するのであれば、これは相当なインパクトを市場に与えると思います。この規定はそれぐらいの破壊力がありますので、逆に自治体も慎重だと思います。
個人的な予想では、ここまで緩和する自治体はなかなかないと思います。それが、はっきりするのは遅くても各改正法令の施行日である6月15日となります。
したがって、今後は自治体の条例改正の情報が非常に大切になってきます。全てを決めるのは結局は自治体の条例なのですから。
まとめ
今回の改正はいままで議論のあった旅館業法、規則、要領を大幅に見直したので、6月15日に向けてこれから自治体の条例・規則も改正されていきます。
結局はその動向次第という事になります。
最後に1点、この話しは旅館業についての話しですので注意してください。簡易宿所に関してはここまでの緩和はありませんので、これまでどおり自治体の条例どおりとなります。
ただ、簡易宿所のフロントに関しては緩和通知も出てますのでそれは機会があったらまた触れることにします。
冬木 洋二朗
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