以下物件を購入し、民泊運営したいと思っております。許可申請代行のお願いができないかと思い、ご連絡させていただきました。
何卒ご指導よろしくお願いいたします。
実際にあったお問い合わせです。基本的にメールでの相談は無料ですが、こうやって事例としてブログにエントリーさせてもらいます。もちろん特定できない範囲です。
自作しました。かなり適当に画像編集ソフトで作りましたがけっこうな時間がかかりました。
この図面をもとに解説しましょう。
簡易宿所許可取得を前提に
民泊の許可申請代行ということですが、簡易宿所許可ということを前提にします。旅館業許可だと部屋数が足りないので、簡易宿所許可しか選択肢がありません。
用途地域
用途地域は商業地域とのことですので問題はありませんが、文教地区でも簡易宿所営業はできませんので一応そっちの確認も必要となります。文教地区とは学校とか図書館とか教育施設がたくさんある地域のことです。住居系の用途地域では文教地区にも注意が必要です。
収容定員のハナシ
この後の便器の個数や洗面設備の個数にも影響してくるのが全体の収容定員です。考え方としては収容定員が多ければ多いほど便器・洗面所も多く設置しなければなりません。この施設はビルのワンフロアなので1階しかありません。したがってこの階の収容定員が施設全体の収容定員になってきます。
簡易宿所の場合、旅館と異なり基本的には各部屋は他数人で共用しなければなりません。したがって、各部屋の定員は2名が最低定員となります。定員1人あたり1.5㎡の有効面積が必要となりますので洋室の9㎡の部屋であれば9÷1.5=6人まで収容定員を増やすことができます。ここでは、若干の余裕をもって一部屋4人の収容定員としてみましょう。
一部屋に2段ベットを2つ設置する感じです。なので、施設全体では9㎡の洋室に4人、8㎡の洋室に4人×2で合計12人の収容定員とします。
簡易宿所の場合例外として全ての客室を多数人で使用しなければならないわけではないのですが、それはここでは割愛します。長くなりすぎるので。というか説明がけっこうめんどくさいのでw
ダイニングキッチンをどうするか
ダイニングキッチンの部分をどうするかは微妙ですが、ここでは帳場を設けてロビーとして使用しましょう。玄関からの人の出入りは帳場から常に確認できないといけないので扉はとっぱらいます。建築基準法での影響がでない限り、できれば廊下側の壁もなくしたいところです。
まあ、とりあえずダイニングキッチンはフロントとロビー・フリースペースにしましょう。15㎡あれば管理人控え室のスペースもしっかりととれそうです。
トイレ(便器)の数
トイレ(便器)の数は全く足りません。収容定員が12人の施設ですのでトイレ(便器)は4つ必要になります。正確には便器数です。トイレ(便器)は1個しかありませんので、3つの増設は必須です。
便器としてカウントされるものに大便器、小便器の区分はないので大便器を2つ、小便器を1つ増設という形でもOKです。スペースがとれるかが一番の問題ですね。玄関左側に増設ぐらいしかないですね。
洗面設備の数
洗面設備は基本的には便器の数マイナス1なので、3つの洗面設備が必要となります。自治体によっては洗面設備の幅員や給水栓の距離なんか決まっていますので注意が必要です。
脱衣所・洗面所に2つ増設するスペースがとれればいいですが、なかなかキツイ気がします。
浴室の数
浴室ですが目安として10人定員につき1つの浴室が必要になります(自治体ごとに扱いが異なります)。シャワーのみよりかは浴槽を用意したほうが良いでしょう。自治体によってはシャワーでOKなところも意外とあります。
窓
意外と忘れがちなのが窓です。そして、例にもれず図面を作ってる僕も窓を書き忘れてますw
窓は各部屋にあるとしましょう。旅館業法での窓は建築基準法で求められる窓ほど厳しくはありません。旅館業法では窓は客室の有効面積の1/10の大きさが必要になります。
新築ではなく、転用を考えている場合は窓をどこにとるかによって客室とできる部屋が決まってきますので、窓の確保は大切です。
天井高
2段ベットを使用する場合には天井高が2.5m以上必要となります。自治体によっては天井高は関係ないところもあります。
以上が施設のハード面に関する部分です。
結論としましては、この物件の場合には水回りを中心としたそれなりのリフォームが必要となります。増設箇所のスペースの確保も課題ですね。
建築と消防も忘れずに
このほかに、この物件が100㎡超えの場合には用途変更の確認申請が必要になりますし、消防法にも配慮しないといけません。100㎡超えじゃなくても建築基準法に基づいたチェックは必要になります。
消防法で要求される自火報は小規模用でない場合、100万単位での工事が必要になりますので注意が必要です。設置個所も他のテナントを巻き込む可能性があります。
こんな感じでしょうか。
今回はあくまで旅館業法、保健所的な観点から解説しました。
冬木 洋二朗
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