前回に引き続き、お問い合わせからシリーズです。
こんなのをいただきました。
東京都中央区で 古い戸建住宅を直して簡易宿所にしようと思っているのですがフロント設置義務があるため事業としては難しそうです。やはり中央区では規模がないと簡易宿所は現実的ではないのでしょうか?
宜しくお願いいたします。
来ましたね。中央区。なかなか手ごわいです。
まずは、前提として気になる点を。「古い戸建住宅を直して 簡易宿所にしよう」の部分が気になります。
旅館と簡易宿所どちらがよいのか
2018年の6月15日に旅館営業許可の場合でも、客室数が1部屋でもOKになりました。それまでは簡易宿所と異なり、旅館営業の場合、客室数は最低でも5部屋必要でした。
なので、従来は1部屋で宿泊業のライセンスを取得しようと思ったら選択肢としては簡易宿所しかなかったわけです。
ただ、簡易宿所の場合、性質上共同形態の設備が多くなり、規制を厳しくしなければなりませんので、どうしても旅館営業より規制のハードルは高くなってしまいます。トイレの数、洗面所の数、脱衣所の設置・・
そういった事を考えるのであれば、戸建て住宅をカスタマイズして宿泊業のライセンスを取得するのであれば、簡易宿所より旅館営業のほうが省エネで事業が開始できます。
ターゲットとして、1人や2人の少人数のゲストをメインと考えているのであれば、簡易宿所のほうが良いですが、1グループに一棟貸しのようなスタイルを考えているのであれば、旅館営業のほうが無駄な出費を制限できます。
したがって、簡易宿所でいくか旅館でいくかは、現状の戸建ての状況(トイレの数、洗面所の数・・)と、どういった運営がしたいのかを総合判断して、決定するのが良いかと思います。
フロント設置と常駐性は別もの
次は、フロント設置義務についてですね。
この点は簡易宿所・東京23区自治体別フロント設置・管理者配置状況まとめ<保存版>で触れていますので、参考にしてください。
大切なのは、フロント設置義務とスタッフの常駐義務は別ものだということ。ここら辺を混同している方が多いですが、2つは別ものです。
フロント設置義務は、フロントを物理的に確保しなければならないという事、施設の設備の問題です。対して、常駐義務は読んで字のごとく、スタッフを施設に常駐させなければならないということ。
ですので、論理的にはフロント設置義務はないけど、常駐義務はありの自治体や、逆のフロント設置義務はあるけど、常駐義務なし(これはあまりないかもしれない)という自治体もあり得るわけです。
東京でいえばフロント設置義務と常駐義務はイコールになっている自治体が多いです。
で、問題の中央区ですが、フロント設置義務ありで、常駐義務もありです。
しかも、フロントの長さは180センチ、かつフロント内部は3㎡の面積確保が要求されます。また、フロント設置の場所や、フロントの向きなんかも、なかなか細かく指導がはいります。
したがって、戸建てであればまずはフロントスペースが確保できるのか、そしてスタッフが常駐できるのかが問題となってきます。
これは何も中央区に限った話しではなくて、全ての自治体でスタッフの常駐問題をどうするかが、事業的には最も懸念すべき課題となります。
収容人数と人件費を含めた経費を事前にしっかりと把握されることが大切かと思います。
ちなみに、うちが許可取得をお手伝いした中央区の簡易宿所では、収容34人でスタッフも数名雇っていますが、稼働が9割程度とかなり良いので利益は出ているとのことです。
冬木 洋二朗
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