旅館業・簡易宿所の許可を取得するに際して、多くの場合まずは第一段階として建築基準法に基づく用途変更の手続きを経なければなりません。
基本的には、旅館・簡易宿所として使用する床面積の部分が200㎡を超える場合に、用途変更の確認申請が必要なのですが、床面積が200㎡を超えない場合でも建物の用途は旅館・ホテルに変更できていないといけません。
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200㎡未満だからといって建築基準法を無視して住居や事務所の用途のまま宿泊業をするわけにはいきません。
※建築基準法が改正され、2019年6月以降は200㎡以上の場合のみ確認申請が必要になります。詳細は、建築基準法改正を民泊に関係する部分だけ解説。用途変更が200㎡からにを参考にしてください。
違法に増築している場合
以前に関わった案件のお話です。
都内の雑居ビルのワンフロアで200㎡ちょっとの空きがありました。
建物自体は築40年ぐらい経っていますが検査済証もあり、窓面積も広く、天井も十分な高さがあり簡易宿所をやるにはもってこいの物件でした。
建物外観にかすかな違和感が・・
ただ、建物の外観をみるとわずかですがタイルの色が違っている部分がありました。
もしその部分が検査を得ていない増築部分であれば、今回用途変更をするにあたりその部分を適法な状態にしなければなりません。
オーナーに聞いても建築当時の様子はほとんど覚えていないとのこと。その後、かなり古くなった申請図書や関係資料を見せてもらうと・・・まさにビンゴでした。
違法増築部分発見
タイルの色が違っている部分は新築時にはベランダでした。
その後、そのベランダ部分は何らかの理由によって部屋の一部とされ、外壁を作り、タイルを新しく貼り、今に至っていました。ほんとに違和感なく、増築部分が既存の建物になじんでいてその増築部分の技術には施工業者も舌を巻いていました。
完了検査済み
もっとも、新築時の完了検査はしっかりと受けているので、タイル部分は完了検査後に増築されたということです。
増築後に完了検査を受けていれば問題ないのですが、今回は完了検査は受けていませんでした。
ということは、その増築部分はいわゆる違法建築部分なわけです。
違法建築物の用途変更
違法建築の建物を用途変更するには、その建物を完了検査を通った新築時の適法な状態に戻さなければなりません。
新築時の状態に戻すということは、増築部分の減築を意味します。減築が簡単にできそうならば問題はなかったのですが、減築工事には相当の費用と他テナントへの影響が予想されました。
結果、工事費用の負担の問題や、工期の問題等の折り合いがつかずこの案件は頓挫してしまいました。
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早い段階で色々な事実が判明しましたので、事なきを得ましたが、もしそれが物件を借りた後なんかに判明した場合は悪夢です。
合法民泊というと、皆さん旅館業や簡易宿所の許可のことばかりに目がいきやすいですが、特に用途変更案件でホントに注意しなければならないのは建築基準法であり、用途変更の手続きですのでくれぐれも注意してください。
冬木 洋二朗
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