日本の民泊に関する法規制はかなり情報が錯綜しています。
簡易宿所・旅館業法での民泊、特区民泊、民泊新法と現時点では3つの制度が並立しています。
弊所に寄せられる民泊を始めたいというお問い合わせの中でも、圧倒的に多いのがそもそも民泊に関する制度がよく分からないというものです。
これまで、このブログでも折に触れて各制度の解説はしているのですが、制度まとめは書いていなかったので今日は3つの民泊の関する法規制をわかりやすくまとめてみました。
3つの民泊制度
日本の民泊に関する法規制は3本の柱でできています。
- 簡易宿所・旅館業民泊
- 特区民泊
- 民泊新法
今、日本で民泊をやる場合には必ずこの3つの制度に基づいた許可あるいは認定が必要です。※農家民泊、イベント民泊等一定の特殊な民泊は除きます。
したがって、airbnbで民泊をしようが、自在客で民泊をしようが上の3つの制度に基づいた許可・認定がなければなりません。
各法規制ごとに見てみましょう。
簡易宿所・旅館業民泊
まずは、旅館業法という法律に則って始める民泊です。
旅館業法は70年以上前にできた法律で、民泊という言葉が定着する前からあった法律です。いわゆる、旅館やホテルをやりたい人がこの法律に則って許可を取得します。
最新の改正は2018年6月です。最低客室数の撤廃や罰金の引き上げ等の改正が行われました。詳細は以下を参考にしてください。
旅館業法改正のまとめ① |
メリット
旅館業法に基づいた許可を取得できれば、宿泊業を自由に運営することができます。airbnbで自由に合法民泊が可能です。
旅館業法での許可はどちらかというと民泊という枠ではなく旅館業・ホテル業という位置づけになります。
180日制限や最短宿泊日数制限がなくなる
最大のメリットは、後ほどふれる宿泊日数の制限や年間営業日数(180日ルール)といった制限がなくなることです。
旅館業・ホテル業なわけですから当然といえば当然ですね。
後ほど説明する宿泊日数や年間営業日数の制限はビジネスとして民泊を考えた場合、最も注意しなければいけない点です。
デメリット
許可取得の難易度が高いこと。これが最大のデメリットです。
旅館業法上の許可の場合には、厳しい施設要件やフロントでの従業員の常駐が必要になり、それなりの設備投資とランニングコストが発生します。
許可取得が可能な物件(オーナー許可があり許可要件を満たす物件)も現状ではきわめて希少です。
特区民泊
国家戦略特別区域内でのみ認められる民泊のことを特区民泊といいます。
2019年2月現在、特区民泊が認められているのは大阪府(一部地域を除く)・大阪市・東京都大田区・千葉市・新潟市・北九州市地域となります。
特区としての指定を受けている自治体は他にもありますが、特区「民泊」ができるのは上の自治体のみです。
メリット
特区民泊の制度は、特区内での民泊について、一定の要件を満たす場合には旅館業法の規制を除外するというものです。
したがって、特区民泊の場合、厳しい施設要件やフロントでの従業員の常駐がなくなります。これが最大のメリットです。
特区民泊では民泊を適法に行うためのハードルが一気に下がります。
特区民泊の認定を取得するには、大規模な施設のリフォームも、建築基準法上の用途変更も不要です。
特区民泊の詳しい要件は、大田区、特区民泊の条件を徹底解説しました。で詳しく解説しています。 |
デメリット
もっとも、特区民泊でもデメリットはあります。
特区民泊では、宿泊者を宿泊させることができる日数が決まっています。特区民泊には最低宿泊日数というものがあって、それが現在は2泊3日となっています。
これまでは、6泊7日だったこの最低宿泊日数によるデメリットは2泊3日に改正されたことによってほぼなくなりました。
特区民泊の2泊3日については、特区民泊は今後2泊3日からOKになりますが詳しいです。 |
したがって、特区民泊のデメリットといえるものは大阪地域ではほとんどなくなりました。
東京地域は大田区のみでしか特区民泊ができないことがデメリットといえるでしょう。
民泊新法
日本の新しい民泊制度を作ろうということで平成27年11月から厚生労働省と観光庁主催ではじまった検討会が「民泊サービスのあり方に関する検討会」です。
この検討会の結果できた制度が民泊新法になります。
2018年6月15日より民泊新法、住宅宿泊事業者法が施行されています。
メリット
民泊新法での最大のメリットはやはり合法化のハードルが低いことでしょう。
家主居住型民泊の場合であれば、消防要件も厳しくはないのでコストをかけずに合法化が可能です。
民泊を合法化する為のハードルが3つの制度の中で一番低いのが民泊新法です。もっとも、家主居住型の場合には消防要件が厳しくなりますので注意が必要です。
デメリット
民泊新法では、民泊新法で合法化された施設の年間営業日数は180日以下と決められています(180日以下は各自治体で短縮可能:短縮とは営業日数を少なくすることです)。
したがって、民泊新法では1つの物件で年間の半分しか民泊に使用することができないのです。
これはビジネスとして民泊を考えた場合は決定的なデメリットです。宿泊日数制限がある特区民泊なら、中長期滞在の旅行者をターゲットにすることで、まだビジネスとしての可能性がありますが、民泊施設の年間営業日数を制限されたら何もできません。
よって、特区民泊のデメリットは今後大きな大きな足かせとなってくる気がします。制度全体が機能しなくなってしまうほどの強力なデメリットが民泊新法の年間営業日数の制限なのです。
まとめ
以上、3つの制度のメリット・デメリットをまとめました。
できるだけコンパクトにまとめたかったので割愛した部分が多ので深く知りたい方はリンクを辿っていただければいいと思います。
最後に3つの制度のメリット・デメリットを簡単な図にしておきます。
最短宿泊日数 | 年間営業日数制限 | 合法化の難易度 | 実施地域 | |
旅館業法 | 1日~ | なし | 難しい | 全国 |
特区民泊 | 2泊3日~
|
なし | 普通 | 特区のみ |
民泊新法 | 1日~ | 180日 | 易しい | 全国 |
冬木 洋二朗
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