消防関連の記事がかなり読まれていますので、今日は民泊をやる場合に消防関連で事前に確認すべき大切な書類について書こうかと思います。
まず、前提として、ここでの民泊とは旅館業法での民泊、民泊新法での民泊、どちらも含みます。
基本的には、民泊に対する消防法規上での位置づけは、消防法施行令別表第一(5)項イというものになりますので、旅館業法でも、民泊新法でも同じ規制がかかると思っていただければ間違いはありません。(家主居住型民泊に関しては話しは別です)
民泊物件探しの段階で消防設備をチェック
民泊をはじめる際の現地調査をする時に、防災業者が決まっているのであれば、その業者に現場で確認してもらうのが一番です。
ただ、ほとんどの場合、これからこの物件で民泊をやろうという時には防災業者もまだ決まっていない段階で、素人が目視で確認しても、果たして既存の防災設備がしっかり機能しているかはわかりません。
既存防災設備の有効性は、防災業者が現地で確認しても、防災装置を作動させない限りわかりませんので注意が必要です |
では、どうするか。
消防用設備等点検結果報告書を入手
そんな時は、消防用設備等点検結果報告書という書類を物件の管理業者又はビルオーナーからもらいましょう。テナントビルであれば、6か月に1回の機器点検と1年に1回の総合点検を行う必要があります。
その結果が記載されているものが消防用設備等点検結果報告書です。
マンションなんかでも、定期的に防災業者が点検にきますよね。それが、この点検報告書を作るための点検作業なわけです。
報告書には、どこの感知器が作動しないとか、誘導灯が壊れているとか、そういった事が記載されていますし、既存設備でどんなものが設置してあるかも記載されています。
なので、報告書を見ることでビルの防災設備の現状が一発でわかります。管轄の消防署も報告書を持っていますので、相談の際に報告書をもって相談にいったほうが話しが早いのです。
防災設備については、実際に作動してみないと外見からの判断のみではわからない部分が多々ありますので、報告書が必須になります。
新宿のテナントビルでの実例
こんな、事例がありました。
その物件は新宿の5階建てテナントビルでした。2階部分のワンフロアで民泊をやりたいとのことで、新法に基づいて申請をする準備をしていました。
その段階で、報告書を物件管理会社さんから取り寄せたところ、防災設備に数十か所の異常が見つかりました。2階の民泊をやろうとしている部分は異常はなかったのですが、各階で感知器、誘導灯の故障がいくつもありました。
管轄の消防署と協議した結果、すべてを直してくれなければ相談記録に判子は押さないとのことでした。民泊新法の申請は消防については、消防のOKが出ていなくても消防に相談に行った記録さえあれば保健所に申請することが可能です。
申請が受理されれば、ライセンスが発行されますので、厳密にはライセンス発行までに防災設備が適法状態になっている必要はないのです。
その後、消防検査という流れですので、通常は防災設備が適法という判断は、申請時には不要なのですが、この物件に関してはあまりにも異常個所が多いということでビル全体を適法にしてからでないと相談記録に判子は押せないという事態になりました。
通常、ビル全体を適法に保つ義務はビルオーナーの責任なのですが、そのビルはオーナーが外国人であり、管理会社も協力的ではなかったため、計画を見直すようアドバイスをしました。
その後、どうなったかは不明ですが、おそらく諦めたのでしょう。
民泊新法に関しては、保健所ベースでライセンスを取得することはだけはできますが、その後の消防の検査でビル全ての異常個所が治っていないといけないので、リスクがありすぎると判断しました。
無理やりにでもやっていたら、今頃どうなっていたか、ちょっと怖い案件でした。
そんなこともありますので、事前に管理会社、またはオーナーから消防記録報告書を入手することはとても大切なのです。相談時からそれがあればその後スムーズにお話しが進みますので、とても助かります。
消防用設備等点検結果報告書、あまり聞きなれない書類ですが消防の観点からはとても大切な書類なのです。
冬木 洋二朗
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