シェアハウスの物件で民泊はできないですか、という相談が例のシェアハウス事件以降、非常に増えています。
ちょうど、手元にシェアハウス業者から依頼された図面がありますので、今回は既にあるシェアハウスの物件を使って、用途変更を行い、簡易宿所・旅館業許可を取得する際の注意点を解説します。
旅館業・簡易宿所許可がほしい方、許可がとれる物件情報がほしい方はこちらから
まず、方針としては3つの壁をクリアしなければなりません。
- 建築基準法
- 旅館業法
- 消防法
以下、解説します。
シェアハウスも簡易宿所も特殊建築物
シェアハウスは建築基準法上「寄宿舎」にあたり、特殊建築物という建物になります。
同様に、簡易宿所や旅館も特殊建築物ですので、用途変更は比較的やりやすいです。同じ特殊建築物ですので、建築基準法上も共通する部分が多いです。
ただ、1点だけ注意点があります。
それが、平成26年以降にできた新しいシェアハウスの場合なのです。
寄宿舎についての改正
平成26年までシェアハウス(寄宿舎)には窓先空地と準耐火構造の防火上主要な間仕切壁が必要でした。
今も、規模によっては必要ですが、平成26年、平成27年とシェアハウス(寄宿舎)については改正が行われ、その結果、一定の要件を満たす場合には窓先空地と間仕切壁の耐火構造につき緩和が行われています。
したがって、そのような緩和が行われた物件を簡易宿所や旅館にする際には、逆にその緩和が足かせになってしまいます。
新しいシェアハウスほど不利になる
古いシェアハウスであれば、緩和措置を受けずに寄宿舎として厳しい要件を満たしているはずですので、その点の心配はないのですが、新しいシェアハウスでは窓先空地がない物件や、防火上主要な間仕切壁が準耐火構造でないものがあります。
窓先空地が確保できない場合は、他の窓の状態にもよりますが、けっこう致命的ですので確認が必須となります。
参考:窓先空地がとれない物件でも民泊許可(簡易宿所・旅館業許可)を取得する2つの方法 |
旅館業法上の規制
手元にある図面を見ますと、トイレ、洗面の数が足りません。だいたい、各階に1つというのがシェアハウスのパターンではないでしょうか。
各部屋にトイレ・洗面がついているシェアハウスもなかなかないと思いますので、共同トイレと共同洗面は旅館業法上の基準を満たす必要があります。
参考:簡易宿泊所でのトイレ数の基準についての大切なポイントを解説しました |
シャワールームは収容定員10人につき1台ですので、1台あれば問題ないかと思います。
客室の広さ
客室は、ベットを置く場合は9㎡必要ですので注意が必要です。シェアハウスだと7㎡ぐらいの客室が多いように感じます。
その場合は、旅館営業ではなく、簡易宿所営業にするしか道はありませせん。
簡易宿所であれば、客室面積は理屈の上では最低3㎡から認められますので。
他には、玄関部分にフロントが必要ですので、玄関付近の部屋を1部屋潰す必要がありそうです。リネン庫も必要になります。
消防法上の規制
消防設備に関しては、シェアハウスの場合住宅とほとんど変わらないと思いますので、大幅なアップグレードが必要になります。
ただ、延床面積が300㎡未満で、2階建ての場合であれば特定小規模施設用自動火災報知設備が使えますので、そこまで費用はかからないかと思います。
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ただ、特定小規模施設用自動火災報知設備は感知器数が15個までしか付けられませんので足りるかどうか微妙なところです。
1フロア5部屋程度ぐらいで2階建てですとかなりギリギリになってきます。
参考:民泊と消防法について|自動火災報知機等、消防設備設置義務 |
まとめ
以上、シェアハウスを簡易宿所や旅館にする場合に最低限必要な事項をまとめました。
もっとも、規制が近いのは建築基準法ですのでそのままスライドできる部分が多くはありますが、改正後の新しいシェアハウスには注意が必要です。
旅館業法と消防設備については、新しく対応しなければならない部分が比較的多いです。
冬木 洋二朗
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